大学院はてな

大学院はてなネタをもう一つ.今日でた授業が面白かったので,まとめの意味も込めてメモ.書き始めて思ったのだが,まとめるには情報が足りない…まぁ,いいや.
また,わかりにくいところ,誤っているところ(理解違い,記憶違い,記録違い)があるかと思います.コメント大歓迎です.
脳科学の授業.テーマは神経細胞の新生.
脳の特定領域(海馬,側脳室)にて神経細胞の新生が観察される.この時新生する細胞は発生段階の肝細胞が残存していたものでなく,グリア細胞が分化転換して,神経系肝細胞になる,と言われている.
側脳室下帯で新生したStem cell(未熟な細胞)は脳路を通って嗅球へはこばれ,そこで嗅球の神経細胞へ分化する.側脳室から嗅球が離れているため,側脳室で新生細胞は大量に生産される.
一方,海馬において.海馬はアンモン角と歯状回というものからなり,神経再生は歯状回周辺の歯状回門領域と呼ばれる場所で観察され,歯状回の神経細胞へと分化する.
さて,海馬での神経新生について.海馬は新規記憶の場である.DNA合成阻害剤を投与し幹細胞の分裂を阻害し神経新生を阻害することにより,学習効率が極端に低下することが分かったという実験結果が示された.また,海馬での神経系幹細胞が増殖する条件としては
1)ストレスのない環境
2)適度な刺激のある環境
3)海馬を使った学習が為されていること
があげられる.動物実験に置いて,1)は,ストレスホルモン(グルココルチコイド)は神経系幹細胞の増殖を著しく低下させることが知られている, 2)は飼育ケージ内に遊び道具を入れてやると,神経新生が促進する.3)は海馬は空間記憶と深い関係があり,動物に場所記憶実験をさせた群と,させない群では,記憶群の方が顕著な新生が観察された.
以上より,学習や記憶と密接な関係がある,とは言い切ってないな,確か.
話変わって,神経系幹細胞の発見とその利用について.利用のひとつに,脳への移植があげられる.
バーキンソン病,中脳黒室でのドーパミン産生細胞の変性により,ドーパミン量が極端に低下するために,運動機能の制御が不全になる病気.パーキンソン病の治療法としてドーパミン補充療法があげられ,これには次のようなものがある.
1) L-DOPA(ドーパミン前駆物質)の補充.これはドーパミン血液脳関門を通過できないため,ドーパミンそのものを補充することが出来ないために,前駆物質を補充する.
2) 神経幹細胞を移植する.
3) ドーパミンを産生するように遺伝子操作した細胞を移植する.
(眠くてよく聞いてなかったんだけど)たとえば,抗体免疫担当細胞を通さずドーパミン,栄養,酸素などを通すような半透膜カプセルの中に,本人以外の生物のドーパミンを産出する細胞を入れ,それを脳内に移植することで,ドーパミンの補充を計るって事なんかも考えられているそうです.ただ,この問題点は,ドーパミン補充細胞が死んでしまったらまた新しく脳内にカプセルを入れなくてはならないため,脳が損傷する可能性が高いと言うこと.
続く.
続き
そしてクライマックス.違う.授業は終盤へ.
脳は作り直せるか?末梢神経は再生するが,中枢神経は再生しないとされてきた.中枢神経において,グリア細胞(オリゴデンドログリア)が神経損傷時に軸索伸張を阻害するノゴ(Nogo)タンパクを放出するため,軸索の伸張が起こらない.
2002年に脊髄に置いてはNogoの部分ペプチドであるNogo(1-40)がNogoの阻害薬として働くことが見いだされた.(GrandPre et al. ,Nature 417,547-551, 2002)ラット脊髄に傷害を与え,同時にNogo(1-40)の持続的投与を開始したところ皮質脊髄路の再生が著名に促進され,運動機能の評価に置いても,有意な改善が認められた,とのこと.
一方で,脳は神経細胞の再生が可能であっても機能の再生は難しい.
しかし,癌やエイズが克服された時,次に克服すべきターゲットのひとつとして確実に脳があげられるであろう.それは難しい.でも,可能性がある限りやらなくちゃならないんです,それが仕事だから.


でも,可能性がある限りやらなくちゃならないんです,それが仕事だから.

以上,授業まとめ.こうしてみると色々疑問は多いし,あと,こっちは私事だけど,長文がしっかり書ける方々ってすばらしいと思う.以下疑問を列挙(続く)